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ラリックのカタログレゾネはフランス人骨董商のフェリックス・マルシャックによって1989年に初版が出版されます。両腕で抱えないと持ち上げられないほど分厚くて、重い大型本。その重いページを順番にめくると801ページ、“アイスペール”のカテゴリーに今回A-select に掲載するラリックの作品が見つかりました。ルネラリックの存命中製作されたアイスペールは5型。そのうちの1つ1924年に製作された「Feuilles de Vigne(葡萄の葉) 」というデザインのアイスペールを今回ご紹介します。
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【カタログレゾネ】作家の全作品について、図版、制作年、サイズなどが掲載された総作品目録。ラリックのレゾネにはルネ・ラリック存命中のガラス作品がジャンル別に網羅されている。
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花瓶としても実用いただけるこの作品、底に向かってわずかにシェイプした安定感のある円筒形はシンプルで美しい形。レゾネに書かれたアイスペールについての解説を見てみると氷の冷たい温度に耐えるためガラスの厚みを厚くする必要性があり花瓶と比べ分厚い装飾デザインを全体に施してあるそうです。またアイスペールとしての実用性を実現するためのプレス技術には高度なものが必要だったようで、通常のラリックのガラス作品に比べ非常に強い圧力をかけガラスをプレスし、通常より長い時間をかけ徐々にガラスを冷ましていく必要もあり、様々な制約の中、美しさを保ったデザインを追求しています。
ちなみに同じサイズのラリックの花瓶とアイスペールの重量を比べるとアイスペールの方がかなり重いそうです。
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高さ23センチ。セピア色のパチネが施されています。
【パチネ】古色をつけるという意味の言葉が語源で、装飾のディテールを浮き立たせるために使われる彩色法。一般にアラビアゴムを主体とした液に顔料を溶かしたものをガラス素地に塗り、半乾きの状態でふき取ることによって凹凸に色が残り文様を強調しています。
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秋冬は電球を入れ照明器具のように使用するのもおすすめです。
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