やっと色づいたモミジが見える窓際にドームの花瓶を置きました。荒く腐食された無色のガラスを背景に黒いエナメルの濃淡で鳥と梅の花が描かれています。厚く盛られたエナメルではなく鉛筆画のような優しい線と水彩画のような淡いぼかしで鳥の羽のふっくらとした表情、花びらの丸みを描き出し、モノクロームなのに楽しく、頭の中に淡く優しい色が想像できるように思えます。
鳥と花が描かれた部分は腐食が施されておらずガラスの表面が平らなので背景の色が良く透けて見えます。鳥がモミジ色に色づきました。
1928年アールデコの時代の作品。台座部分にエナメルでdaum nancy Franceの手描きのサインがあります。
高さ:20.5㎝ 口径:17.5㎝ 台座部分直径:8㎝
オンラインショップA-selectはこちらをクリックしてご覧ください。
「Daum」 |
フランス、ロレーヌ地方の首都ナンシーに1878年に父が手に入れたガラス工場をドーム兄弟・兄オーギュストと弟アントナンが引き継ぎました。二人は同じナンシーに工房を持つエミール・ガレの影響を受けアールヌーボーのガラス製作を手がけるようになります。ガラス工芸家や美術家など優秀なスタッフを採用し、水準の高いガラス製品を世に送り出しました。
やがて特許を取得したヴィトリフィカシオン(ガラス生地に多様な色彩の斑模様を現出させる技法) などドーム工房独特の技法も編み出し、ガレと並び称されるようになります。1900年パリ万博に出品、ガラス部門でグランプリを獲得し、名実ともにアールヌーボー期とそれに続くアールデコ期を代表するガラス工房となります。その繊細な作品は今なおファンを魅了し続けています。
ドーム工房は現在も操業を続けています。